何がジュエリーになりえるのか、人が喜びや美しさを感じるものを注意深く研究しその高揚感を体験するための装置としてのジュエリーを制作する《naoko ogawa(小川直子)》。 ジュエリーにできることは何か、装身という概念を問い直す作品に触れることは、装飾品としての美しさを楽しむ以上に大切なものを思い出させてくれるきっかけになるかもしれない。 Mirror Jewelry (ミラー・ジュエリー) | 手鏡を覗き込むと、鏡の縁に施されたカットグラスがプリズムの効果で虹色のスペクトルを出していることに気づきます。鏡を傾け角度を調整すると、虹色の光が鏡の中のあなたの顔、首、胸に宝石のように散りばめられます。これは、手鏡の中という、あなただけが存在し、他の誰も間に入ることのできない秘密の空間で、自らに光を照らして遊び、自分を慈しむためのツールです。 鏡は、写真や携帯の画面と違い、鏡の中に奥行きのある立体的な空間を認知できるのが特徴です。現実空間と区別するのが容易でない鏡の中の空間に、鏡を見つめる自分と同じ動きをする像が同時に映し出されます。映像や写真の精度がどんなに高くても、撮影された瞬間に過去のものになってしまうのと異なり、今の自分と「出会える」のは、鏡の中だけであると言っても過言ではありません。 Mirror Jewelry (ミラー・ジュエリー)虹色の光を身体に投影 | そして虹色の光は、例えば雨上がりの空に現れる虹、クリスタルガラスを通過して部屋のあちこちに散らばる七色の光の粒といったように、一定の条件下でのみ現れる光学現象です。歴史を遡っても人は虹に神秘性や奇跡的美しさを感じてきたことが窺い知れます。 この虹色の光を身体に投影することで、装飾品として身に纏うような感覚を引き起こし、その美しさ、崇高さを記憶の中に所有します。また、虹色の光が自分に当たるよう、鏡を持つ角度や顔の向きを調整したりすることをゲームのように楽しむことができます。自分自身と夢中になって遊ぶことは、楽しんでいる自分を認識することにもつながることでしょう。 “drawing”(ドローイング)ジュエリー | このコレクションには重力や感触などを利用して身体感覚に訴え掛けるデザインを取り入れています。人気のコレクションから新作が発表されます。新作「Catenary(カテナリー「懸垂線」)」は、太さが異なる2本のシルバーチェーンのネックレスが、重なることなく胸の上でそれぞれの曲線を描きます。